菅野秀浩のちょっといい話

第55話 真言宗Ⅱ

真言宗Ⅱ 挿絵

 真言宗は「密教」である。

 密教は、瓶に水を溢れるばかりに満たし、その水を一滴も余す事なく他の瓶に移すように法を伝える事を本義とする。

 奥義や法則を、師から弟子へ余す事なく伝えることを相承(そうじょう)というが、真言宗の伝法灌頂(でんぼうかんじょう)は、現在も尚、法を伝える最高儀式として、極めて秘密裡に、嫡々に伝承され、受法した者は皆伝し、阿闍梨と尊称される。

 それで「密教」というのだが、弘法大師空海祖師も、やはり一千二百年の昔、遣唐使として唐に渡り、往時の国際都市長安の青龍寺において、恵果阿闍梨より親しく受法し、真言宗の八番目の祖となられるのである。

 「密教」は、「神秘性・象徴性・儀礼性の三つの要素が一定の体系をもって組織されている」ことを特色として、インドにおいて発達し、「呪術的性格が教義的・実践的に全く純化」し、呪法や呪文が神秘的な働きを促し、除災招福への祈りとなり、仏教にはなかった呪法が「教化の方便」として摂取され、約6〜7世紀に「組織的な経典や儀軌が整理」され、8世紀前後に一体系的な密教経典の大日経や金剛頂経などが成立」したとされる。

 密教が、仏教として純化するのは、祖師方の嫡々子相承の奥義の秘密伝承と、偏に弘法大師の真言宗開教の教義の著作のお陰である。

前の法話
菅野秀浩のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る