菅野秀浩のちょっといい話

第65話 密教の仏1 不動明王Ⅰ

密教の仏1 不動明王Ⅰ 挿絵

 密教の身近な13の仏(初7日から49日忌の七仏と百ヶ日忌から33回忌に至る六仏)を本や辞書の受け売りで紹介する。

 因に、一般的に「ほとけ」と呼ばれるものには、「仏=如来」「菩薩」「天=毘沙門や帝釈など」や、仏弟子や祖師などがあり、変化身や忿怒身の、仏教の教えを守る神々「明王」も、礼拝の対象として崇められた。

 不動明王は原語を直訳すれば「不動威怒明王(ふどういぬみょうおう)」という。

 常に一切動かぬ、揺るぎない堅い悟りへの決意(不動)と、威力あふれる徳と激しい怒りの相(威怒)をもち、ダラニ(明=みょう)を唱えると、たちどころに霊験ご現れるという仏さま(明王)という義であろう。

 名前の示すとおり、怒りの姿を表した忿怒身で、人間のもつ怒りや憎しみの感情を、無理に押さえ付けずオープンにして肯定し、社会悪や邪まな心を正義の怒りへと転化して、どんな人もすべて、正道へ導いてくれる、限りない慈悲心の現れの姿とされる。

 燃える炎は怒りと煩悩を焼尽くす智慧を、岩盤は不動。童形と七つに結んだ髻(もとどり)は、忠実な使者の奉仕の七代に亘る姿、左肩のおさげ髪と頂上の蓮華は、この髪を掴めば忽ちに蓮華座(菩薩)にたどり、右の剣は智慧、左の索(さく)は慈悲。額のしわは生死を憂い悲しみ、左眼を閉じて邪道を隠し、上下の牙は上昇思考と救済を表すという。

 大日如来の慈悲心を、具現した姿と言える。

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