菅野秀浩のちょっといい話

第69話 密教の仏3 文殊菩薩Ⅰ

密教の仏3 文殊菩薩Ⅰ 挿絵

 「文殊の智慧」の言葉が示すように、大乗仏教の代表的な般若経典では「むしろ仏に代わるほどさかんに活躍し、般若=智慧を完全にそなえて説法を行う」菩薩である。

 文殊師利(もんじゅしり)といい、結集(経典の編集)にかかわり、経典にも対告衆(釈尊の呼びかけ者や質問者)として度々登場することから実在したとされる。

 一般的には、お釈迦様の脇侍仏として、普賢菩薩と共に在って釈迦三尊として仏教請来より礼拝され、諸仏諸菩薩の母といわれ、智慧を特性として信仰された。

 一尊の場合も多く、お姿は、僧形や左右のお手を上下させたものもあるが、手に青蓮華や剣や如意をもち、お経(梵篋)を乗せ、獅子の背に座しているものが多い。

 密教においては、密号を吉祥金剛、般若金剛等といい、金色身で頂の髻をさまざまな数に結い、殊に右手の智剣はお大師様も「文殊の利剣は諸戯(しょけ)を絶つ」と説かれ、文殊菩薩の利剣(金剛剣)は誤った考えをすべて絶するものだと強調なされている。左手には青蓮華(諸法に染着されない)を持ち、蓮花弁の上に梵篋(経)を乗せる。

 髪(髻=もとどり)に特徴があり、その数によって智慧の本誓を表し、

    一髻(増益=幸せの増進)、
    五髻(愛敬=和合・親睦)、
    六髻(調伏=魔障や怨敵の摧破)、
    八髻(息災=災難や障りを除く)

の文殊といわれ、無執無我の般若の妙慧で、説法して人々を救済する。

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