菅野秀浩のちょっといい話

第75話 密教の仏6 弥勒菩薩Ⅰ

密教の仏6 弥勒菩薩Ⅰ 挿絵

 弥勒菩薩の梵名マイトレーヤは「友愛」で、「慈から生まれた者」という意で、「慈氏」「慈尊」とも訳され、人天を問わず、全ての人々を慈悲心をもって救済するという誓願を持ち、インドを始め、中国でも、我が国に伝来されても、極めて篤い信仰に支えられ、全土に弥勒菩薩が建立された。

 弥勒菩薩は、菩薩としては修行も成就し、後一生で成仏される位に達していて、兜率天(とそつてん)という浄土の内院に居て、衆生を救済している。そこで「弥勒上生(みろくじょうしょう=弥勒菩薩が常に説法を続ける兜率天へ往生を願う)」の信仰が芽生えた。宗祖弘法大師も弥勒信仰の一人であった。

 また、弥勒菩薩は、釈尊が入滅した後、次にこの世に現れる将来仏とされ、五十六億七千万年の後(釈尊入滅後現在約二千五百年)に、「弥勒下生(みろくげしょう=人間界に降りて、生まれ現れる)」をされ、華林園と云うところの竜華樹(りゅうげじゅ=ブンナーガ樹)の下で菩薩から如来(成仏)となられ、三会(さんね=三会場)の説法で、それぞれ第一会では九十六億人、第二会では九十四億人、第三会では九十二億人を、釈尊の遺弟(遺された弟子)として、釈尊の遺された法を伝えて、教化するという。

 密教では密号を迅疾金剛。経軌で持物や印相も異なるが、身は肉色、冠中に率覩波(そとば)(塔)があり、蓮華座に座り、左手は施無畏の印、右手の花上に智慧の瓶を載せた蓮華を持つ。

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