菅野秀浩のちょっといい話

第76話 密教の仏6 弥勒菩薩Ⅱ

密教の仏6 弥勒菩薩Ⅱ 挿絵

 弥勒菩薩は六七日忌の本尊である。

 京都太秦の名刹広隆寺(国宝第一号)や、奈良斑鳩の里 中宮寺の弥勒菩薩は、そのお顔と頬にあてる細やかな指先、たおやかで類を見ない容姿の美しさに、信仰と美的価値を求めて、終日訪れる人が絶えない。

 弥勒菩薩が刻され祀られる義は、世の中が乱世であったり、飢餓や飢饉、疫病などの流行で、一番の弱者である一般民衆が仏の救いを求めて、一日も早く弥勒菩薩に下生し如来に成仏し、釈迦如来に代わってこの世を浄化し、安心の世の中が続く事への、祈願と救済を懇請するからであろう。

 弥勒菩薩は、名前の示す通り慈悲の尊者といわれるが、仏教の最も基本とする二大徳目は、「慈悲」と「智慧」である。

 慈悲は、『他者に利益や安楽を与え[与楽]慈しみを与える[友愛と友]と、他者の苦に同情し、これを救済しようとする[抜苦]思いやりをあらわすの両語を併挙したもの(仏教辞典)』を言い、苦を除き安楽を与える「抜苦与楽(ばっくよらく)」は、弥勒菩薩の大願である。

 その大願を弥勒菩薩より預かる精霊は、「智慧・慈悲」を得て、愈々成仏への完成を深め、盡七日(四十九日)へと至ります。

 又、成仏した後も、しばらく浄土に止まるか、再生し懐かしい家族のもとへ、弥勒菩薩と共に必ず帰る、或いは帰って欲しいと願う弥勒信仰も、見逃せまい。

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