菅野秀浩のちょっといい話

第81話 密教の仏9 勢至菩薩Ⅰ

密教の仏9 勢至菩薩Ⅰ 挿絵

 勢至菩薩は、通常では計りきれない大きな功徳を表す「得大(とくだい)勢至菩薩」といわれ、大勢志・大精進とも呼ばれる。

 名前の如く、得大な智慧の勢いをもって、直路(真っすぐな路)を示して、極楽浄土へ至らしめるという徳目を備える。

 浄土教では一尊で祀られることは稀で、前項の観世音菩薩と一対で、阿弥陀如来の脇侍仏として、合掌したお姿で左右に在り、往生思想に反映されて信仰され、全土に阿弥陀三尊として祀られた。

 又、常に観世音菩薩とは対向して信仰され、その徳目も観音様は慈母の恵愛と寿命無量を、勢至様は慈父の尊厳を慕われて光明無量を、前者が大慈大悲で大衆を教化するのに対し、勢至菩薩は智慧の光明をもって、普く衆生を済度するという如くである。

 「觀無量寿経」には、「知恵の光をもって、普く一切を照らし三塗(さんず)を離れ無上の力を得る」と説かれ、苦しみや迷いの世界に在る者を、三世に亙って広遠に続く悲願と、十方自在に巡らす神力を駆使して、智慧(釈尊の教えの理論や道理で、世の全て見通す、或いは理解して認識する賢さ)の光で包み、衆生を抱きかかえて成仏を促すという。

 密号を持輪金剛・持光金剛・転輪金剛・空生金剛。

 お姿は、身体は肉色。頭は五つに髷を結い、冠を付け、左手に蓮華花(或いは未敷蓮華)を持ち、右手は胸で印を結び、赤い蓮華座に坐す。

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