菅野秀浩のちょっといい話

第89話 密教の仏12 大日如来Ⅲ

密教の仏12 大日如来Ⅲ 挿絵

 十七回忌は、十三仏の追善供養の法要には含まれないが、金剛界大日と共に両部として、極めて重要な本尊である胎蔵界大日如来を本仏として営まれるので、ここに記す。

 胎蔵大日(本来「界」は付けない)は、大日経(大毘盧遮那成仏神変加持経)を所依として説かれ、胎蔵曼荼羅の真ん中に五色線に囲まれ、八枚の蓮弁を台座にして四仏四菩薩が描かれる「中台八葉院」の中心に、法界定印(両の掌を結跏趺坐の上で丸く組み合わせ、親指の先どおしを触れる)組み、金色に光り輝く身で、髷を結い宝冠を戴き、胸や腕や手首に金環を巻き蓮台に座す。

 大日経は、三句の法門「菩提心(仏を目指す発心)を因とし、大悲(慈悲心)を根とし、方便(目的に近づく方法)を究竟(くきょう)とする」を徳目とし、この「自ら成仏を求め目指す心の発露を重大な核として、自分と他を区別することのない大らかな救済への慈悲のあふれる根源を持ち、飽くことの無い究極の悟り(成仏)を求め続ける過程」が、実は大日如来そのものの心であると説く。

 又、その過程を真摯に求めるには、誰もが有する菩提心を、「如実知自心=にょじつちじしん(自分の心のように自在に観察し、解き明かし、知ること)」に獲得すれば、即疾に仏果(成仏)を得るという。

 年重ねて壱拾七年(満十六年)、精霊は胎蔵大日に大悲大慈を説かれ、全てを救済され、愈々本覚を得て、菩提へ至るのである。

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