菅野秀浩のちょっといい話

第91話 密教の仏13 虚空蔵菩薩Ⅱ

密教の仏13 虚空蔵菩薩Ⅱ 挿絵

 虚空蔵菩薩は、三十三回忌の本尊である。三十三回忌は、俗に「留め」の法事とも言われ、虚空菩薩より上主の菩薩がいないことから、残された者の最後の勤めで、総てを立派に供養し尽くした意味からか、地方によっては半ばおめでたい法要として営まれる。

 例えば、筆者の地区でも曾ては、赤飯を炊いたり、尾頭付きの魚が飾られ、塔婆供養も杉の立ち木を削って面を平らにして書き、頂点には茂る葉を残したまま建立したりした。

 それは三十三年も脈々営々としてその家が続いている(立派に法要を営める)証しでもあり、長寿の現代とは違って、先亡の精霊と早く(自分が幼いうちに)別れるか、長寿を得ているかであり、とにかく夢のように長い月日(一万二千日)が経過している訳で、その篤い「おもい」の尊さに頭が下がる。

 虚空蔵菩薩は、前項でも述べたように、日本には早くからその経典がもたらされ、山岳の修行者にとって、極めて重要な仏であり、その真言を日々三十五遍、二十一日乃至四十九日間誦すると、全宇宙的能力を有すること(すべてのお経や法を暗記する)を得るとされ、篤い信仰の対象であった。

 虚空蔵菩薩の経には、様々な異名があり、「能満諸願大悲、福智円満、悉地成就、如意満足、平等一切、護国群家、天地明鏡、無病延命、不思議誓願、自在円満如意、随願如意、法界自在、依誦得法忍、依経得自在」等、列挙すると、その徳目の多さに目を見張る。

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