第25話 「維摩(ゆいま)の部屋」その1
「維摩経(ゆいまきょう)」というお経があります。
お坊さんではないのに仏教に精通し、それを実践している維摩という人が主人公なんですが、この維摩を『仏教教典散策』中村元編著(東書選書37)で、小気味よく紹介をしてくれているので、まず、紹介しますね。
「(維摩)は比類のないほど財産を持った資産家である。俗衣をまとい、家庭生活を営み、飲食を享受し、賭事やばくちをする場所にも出入りし、遊びに通じ、色街にも通い、酒場にも足をはこぶことも多いのである。仏教以外の教えにも耳を傾け、それらの書籍を読み、政治・法律にも詳しく、街の治安にも協力し、学校にも顔を出す。いろんな会合にも招かれれば喜んで出席する。そのような彼を資産家たちも、在家信者たちも、バラモンや、王族や、町人なども、さらに諸天でさえ尊敬するのである。なぜかというと、彼は自ら処するところにおいて、彼の周りの人々をいつの間にか正しい道に導いているからである。
――中略――
金持といっても金銭に執着していない、学識があるかと学者ぶるのでもない。世間では悪の巣窟だといわれるところでも、そこを避けて通るわけでもない。彼は人間それぞれ生きざまをさらけだしている生活する場にはすべて立ち寄り、そこで人間の正しい生き方を教えているのである。」
――結婚もして、守るべきお寺もある、在家のような私も、こんなふうになれたらいいなと思います。
次回は緊急特集!「えんま」をお送りいたします。