長谷川正徳のちょっといい話

第33話 三つ子の魂百までも

三つ子の魂百までも 挿絵

 年配のかたならば、あるいは覚えていらっしゃるかもしれない話があります。
 それは、インドのラクノウというところで、昭和29年1月に発見されたオオカミ少年のことです。
 当時これは世界中の話題になりました。

 生肉しかたべない、そのため発達したと思われる鋭利なキバのような前歯、光りを嫌っていつも暗いところにうずくまっている……。
 十年近くオオカミに養われたと推定されるこの少年は、ラクノウ市のバルランプール病院に収容され、医師達によって、人間にひきもどすためのあらゆる努力がなされましたが、ついに昭和45年4月、人間にかえることなく、野性のまま死んだのであります。

 この事実は、人間は人間の手によらなければ「人間らしく」育たないということを教えています。
「氏より育ち」といい、「三つ子の魂百まで」という諺はやはり真実なのです。

 私は、側に幼児を坐らせ、乳飲み子を抱いて、朝夕仏壇を拝む信心深い若奥さんを知っていますが、これはすばらしい最高の子供教育だと思って感心しています。
幼児の古い大脳皮質にたくわえられたさまざまな印象は、成人してからの性格を形づくる基礎になると大脳生理学は教えています。

 幼い目にうつったローソクの光、わけもわからずにノンノンサマといって合わせた掌、それらは一番深い心のなかにたくわえられて、ほんとうの生命への畏敬の念とつつしみを知ったよき人間になること、間違いありません。

前の法話
長谷川正徳のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る