長谷川正徳のちょっといい話

第36話 心と体はひとつのもの

心と体はひとつのもの 挿絵

 「病は気から」という古くからの言葉がある。
普通は、単なるもののたとえとして、病人を勇気づける場合などに使われている。
ところがこの言葉は、本来の意味で、実は今の新しい医学のひとつの見方でもある。

 最近、ある新聞で高田明和博士(浜松医科大学教授)の「病は心」と題して書いておられる一文を読んで、たとえそれが体の病であっても、心の影響を受けないものはなく、心のもつれ方を正しく処理することが決定的な意味をもつ場合のいかに多いかを知って、いまさらながら、心を大切にせねばならぬと思わしめられた。
この論述の中で高田博士は、イギリスの臨床医学誌『ランセット』の中の、次の如き報告を紹介しておられる。

 この研究報告は、乳ガンと告知され手術をうけた人の精神状態と、5年後の生存率との関係を調べたもの。
女性患者の手術3ヵ月後の反応は4つのタイプにわかれた。
 第一の否認型は、
 「自分はガンなどになる筈はない」
というタイプ。
 第二は闘争心型で、
 「ガンなどに負けるものか」
というタイプである。
5年後、この両タイプのグループとも、9割の人が生存していた。
 一方、第三の絶望型の、
 「ガンになったらもう駄目だ」
という人は5年後、8割が亡くなっていた。
もう一つの第四の自制型といわれるタイプの人達は、自分の感情、動揺を外にあらわさないひとである。
この人々は5年後、半数が亡くなっていた。

 また、亡くなった人をさらにくわしく調べると、発ガン前に離婚、主人との死別、経済的破綻等、精神的ショックやストレスを受けている人々が多かった。
 はっきり言えることは、気持の持ち方を明るく、そして、“自分の力に限界をもうけない生き方”が大切だということである。

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