長谷川正徳のちょっといい話

第46話 考える人は長生きする人

考える人は長生きする人 挿絵

 今日はどうして人類だけがこうも寿命が延びたかについて考えてみたい。

 学者の指摘によれば、今から4000年昔の人類の平均寿命は18歳くらいだったという。
他の哺乳動物とともに原野を駆け巡っていたころの寿命である。
他の哺乳動物の寿命が4000年前と殆ど同じなのに、なぜ人類だけがこんなに長生きするようになったのだろうか。

 それは人類だけが考える動物になったからだという。
二本足で立つことを覚えたときに、歩くために必要なくなった前足(手)を何に使おうかと考えたのが人間の「考えること」の始まりだそうだ。
やがて地球上で火を使うことを考え出した人間は、とめどなくその思考力を発達させた。
「考える人」「人間は考える葦である」「我思うゆえに我あり」などの芸術家哲学者の言葉を借りるまでもなく考えることは他の動物にない唯一の特徴であり、ついに今日の科学技術文明にまで達した。

 ところが、最近、技術文明の進歩によるあまりにも便利な生活状況のなかで考える習慣がおろそかになるという恐ろしい現象が見え始めた。
テレビは向こうから目に飛び込んでくる。
思考を必要としない。
時間もデジタルでないと時間がわからない小学生もでてきたという。

 こんなことでは人類は恍惚老人ばかりが増え、昔の短命時代に逆戻りしてしまうかもしれぬ。
何でもよい、毎日何か一つ、真剣に考えよう。
それが若さを保つ最大のポイントであり、長命の秘訣でもある。

 そういえば、仏教は世界の宗教の中で唯一の「考える宗教」であった。

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