長谷川正徳のちょっといい話

第53話 殺すなかれ。殺さしむなかれ。

殺すなかれ。殺さしむなかれ。 挿絵

 仏教の根本の戒めが不殺生であることは、仏教がいのちの教えであることに由来する。
釈尊のお言葉をそのまま集めたパーリ語のダンマ・パタという原始仏教経典の中に
「一切の者は刀杖(武器)を恐れ、一切の者は死を恐る。己が身に思いくらべて、殺すなかれ、殺さしむなかれ」
とある。
仏教はここから始まった。
一人の生命を奪うことも許さぬ仏教において、多数の生命を奪う戦争を許さぬことは申すまでもない。

 ところで、今日の世界や日本の動きをみて、どうしてもこの仏教の不殺生の教えが出てこなければと思う。まさに仏教の出番だ。
 上海事変(1932年)以後戦争の歴史の中に生きてきた私は、どんな平和であっても悪い平和というものはなく、どんな戦争であってもよい戦争というものはないという牢固として抜くべからざる確信を抱くにいたっている。

 いま、日本の一番の国際貢献は、大国は絶対、貧しい途上国に武器を輸出するなと勧告することだと大前研一氏はいうが、まったく同感である。
カンボジアの実情を見てきた木元教子さんは、地雷で片足を失ったカンボジア人が30万人もいて、日本に協力を求めている。
日本の技術力を生かして30万本の足を作ってあげることが出来たら、それが本当の国際貢献だと話されていたが、これも全くその通りと思う。
憲法9条の精神、戦争放棄や戦力不保持をうたった9条の真意は世界人類の悲願そのものである。

トヨタ・ソニーだけではなく、日本は憲法9条の不殺生の精神を輸出せよと申したい。

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