長谷川正徳のちょっといい話

第88話 恐るべき殺人礼賛の「ポア」の理屈

恐るべき殺人礼賛の「ポア」の理屈 挿絵

 地下鉄サリン事件で林郁夫被告から報告を聞いた麻原彰晃教祖・被告は「シバ神にポアされてよかったね」といって笑みを浮かべたという。

 また教団強制捜査のきっかけになった目黒公証役場事務長・假谷清志さんの拉致事件のときもこのポアという言葉が使われている。

 自白剤を注射されても妹さんの居場所を話さなかった假谷さんにオウムの医師・中川智正被告は「このまま帰せない。ポアする。」と言ったと関係者は証言している。

 「教団の秘密を知った」「越権行為をした」などの理由で麻原被告が「ポアしろ」と指示すれば、信者同士でリンチを加え、いとも簡単に殺し、死体を第二サティアンにマイクロ波使用の焼却炉で焼いてしまったという。

 ポアというのはチベット語で、死に臨むとき、頭のてっぺんから意識(つまり魂)を抜き出すことを言うのであるが、オウムはこれを曲解して、ポアを殺害の意で使い、本人の魂の救済のため、あえて殺してもよいというふうに使っている。

 つまりその人を殺すのは、その人の悪行をたち切って来世の苦しみを救ってやることだという、とんでもない殺人肯定・殺人礼賛のへりくつなのである。

 仏教にはさまざまな戒律、戒めがあるが、その第一にあるのが「殺すなかれ」である。

 仏教では自分で相手を殺すだけでなく、殺すのを傍観しているのも許さない。暴力否定は仏教の根本である。

 反仏教・非仏教のオウムは断じて宗教団体などではなく、恐るべき殺人集団であった。

前の法話
長谷川正徳のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る