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第60話  何であなたがやらなきゃならないの!


挿し絵    世に、人から何か頼まれたら、なかなかイヤと言えない人は多い。頼めば引き受けてくれるから、そういう人のところへは、多くの仕事が来ることになる。なぜ引き受けてしまうかといえば、依頼に対して、NO!と拒否することに罪悪感を覚える人もいるし、他人から良く見られたくて引き受ける場合もある。どちらの場合も、その責任感から一生懸命やる。それも、ヘトヘトになるくらいやる。失敗なんか恐れない。
   そんな人を見て、周囲の人は言う。「そんなにまでして、することないじゃないか」と。その周囲の人の中で、迷惑を受けている人の場合は、次の句が継がれる。「だいたいどうして、あなたがやらなくちゃいけないの!他にやる人いくらでもいるでしょうに!」

   偏差値教育の中で、同学力の人たちと学生時代を過ごす。社会に出れば、教える方も教わるほうも楽だからマニュアルで仕事を覚える。つまり”お前の代わり”がいくらでもいる時代である。だからこそ現在“かけがえのない自分探し”をする若者が増えている。――そんなことを、文化人類学者の上田紀行先生が『宗教クライシス』(岩波書店)の中でおっしゃっている。するどい分析だ。

   他の誰でもない、この自分が頼まれた用事――“かけがえのない自分”を認めてくれた人がいて、それを実証できるチャンスである。だから、頼まれたら「はい、喜んで」と、つい答えてしまうのだ。(もとより、何もしなくたって、自分はかけがえのない存在で、それだけで尊いのだが、なかなか“I am O.K.”が出せないんだよねえ。)
   もし、あなたの近くに何でも引き受けちゃう人がいたら”どうしてあなたがやらなきゃならないの!」なんて責めないで、言っていただきたい。
「あなたならできるよ。がんばって!」と。

   さて、次回は松崎さんからのリクエストで「知識と智恵はどちらが役にたつ?」でいきます。 ショートケーキを二人で文句無く分けるにはどうしたらいいでしょう。
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