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第73話  クチ下手


挿し絵  正直なところ、私は知らない人と一緒にいるのが、とても苦手である。何を話したらいいのかわからないからだ。つまり口下手である。
周囲の人は、あんなにしゃべっているくせによく言うよ!と言うのだが、それは物事の本質を見ていない発言だ。
確かに、しゃべっていることは事実だ。本来私は無口なのだがと言うと、お前のムクチは六口だと嘲笑されるくらいしゃべる。
しかし、私にとっては大変な苦労と、悲壮なまでの努力を続けているがゆえの、オシャベリなのである。
 ここまで読んで、そんなに嫌ならそういう場へ行かなければいいじゃないかと思う人もいるだろうし、実際にそういう場に行かない人もいるだろう。 しかし、今回は、行かなきゃならない時の話だし、実際に行ってみると結構愉快になるという話の展開になる(はずなのだ)。

 さて、私の苦労と努力が何かと言えば、相手との共通点を探す苦労と、それに関心を持つ努力だ。
どんな人とも共通する話題は、天気。今日はいいお天気ですね、と言うやつだ。でもこれでは当たり障りが無さ過ぎて話が続かない。
仕事、趣味、家族構成……(なんだかお見合いの履歴書みたいだナ)。このくらいまでは突っ込んでいかないと、こちらの関心事に引っかかってこない。
そんなことを聞くのは失礼だと思っていたのだが、案外そうでもない。“差し障りがあったらごめんなさい。でも、独身でいらっしゃいますか”と切り出せば怒る人はいない。他にも“つかぬことを伺いますが、お仕事は何ですか”とやってもいい。
なるべくなら、「私は今年46歳になりますが、おいくつになられます」などと、こちらの情報を先に伝えるほうが望ましい。そのほうが相手が心を開いてくれるからだ。

 タクシーに乗ると「運転手さんは、仕事で一番遠くはどこまでお客さんを運んだことありますか」と聞く。
少し親しくなった人と話題がとぎれたら「あなたにとって、生まれてから最初の記憶って何ですか」(これは『谷川俊太郎の33の質問』筑摩書房にあったやつ)なんかはおすすめだ。

 ねっ、大変な苦労と努力でしょ!こんな思いをしなくちゃならないのは、ひとえに私が口下手だからなのです。
さて、次回は東京都仏教保育協会の新任先生研修会での「写仏実技」でのヒトコマから。参加者が描いた仏さまに私が言葉を書くコーナーで、リクエストが多かった言葉「みんなに好かれる人よりも」についてです。
八方美人系の方、読んでみて!

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