名取芳彦のちょっといい話
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第79話  いつか言ってみたい一言


   歳相応の色気
今月はじめ、奈良の長谷寺で、30分の法話を6回やった。
次の出番で待っていたつくば市一乗院のご住職、鈴木暁仁僧正が、控室に戻った私に
「名取さん、あんたの話は江戸風の歯切れの良さと、何より歳相応の色気があって、じつにいいよ」
と言ってくれた。
私はこういう“何を言っているか良くわからないけど、なんとなく説得力のある人”が大好きだ。おまけに、「歳相応の話の色気」という表現は、初めて聞くものだったし、尊敬する鈴木僧正のやさしい眼差しとともに発せられたので、説教坊主冥利につきると感激した。
いつか、だれかに同じ言葉を言おうと思った。

挿し絵    ピンチヒッター
私は頼まれたことは、たいがいのことは引き受けしまう。講習会などで講師がドタキャンになって、代役をたのまれることもある。
5年ほど前にそんなことが続いたことがあった。すると風の便りに“どうして名取ばかり使われるんだ……”というヤッカミが私の耳に届いた。
心苦しかった私は、担当の係の人に、私ばかりじゃまずいんじゃないですか?と言った。するとこんな答えが返ってきた。
あのね。ピンチヒッターっていうのは、ヒットかホームランを打ってくれる人しか出せないんだよ――代役というのはそういうことなのかと思った。嬉しかった。
私の代役を誰かに頼む時には、この言葉を添えようと思った。

   生んでくれてありがとう
これは聞いた話である。
大阪にいる小学生の孫2人が埼玉のおばあちゃんの家に遊びにきた。3日後おばあちゃんは子供たちを東京駅まで送っていった。
新幹線に乗り込む前に、4年生のお姉ちゃんがおばあちゃんに言った。
“おばあちゃん、お母さんを生んでくれてありがとうね”
と。
自分が幸せだと思えないと言えない言葉だ。
いつか、私の子供たちにも、おじいちゃん、おばあちゃんに言ってもらいたい一言だ。

 さて次回は「オシャカになるって仏教語?」という質問をみなみちゃんからいただいたので、似た表現の“オダブツ”を合わせてまいります。
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