ちょっといい話

第107話 頑張ってって言わないで

挿し絵  うつ病の人に“がんばって”と言ってはいけない。回復しようと一所懸命になって頑張っていて、それ以上は無理なのに、そんなことを言われれば、精神的負担が増し症状が悪化することがあるからだ。

 身近な人を亡くして間もない人にも“元気出して”は禁句だ。元気など出るはずもないのに、励ましの言葉だけが空回りして、大切な人の死を受容するステップをふまずに、無理して明るい顔で振る舞うことは精神的に良くないからだ。
 他にも、気にするなとか、忘れてしまえばいいのにという助言は、当事者にとってほとんど役にたたない。気になってしまうから困っているのであり、忘れられないから厄介なのだ。
 では、そんな時どうすればいいのかというと、必要なのは相手への共感ということになっている。それは大変でしょう、おつらいでしょうね、本当に悲しいことですね、などの言葉がけでいいのだ。これらは臨床心理の分野から提言されていることで、最近よく聞く話だ。

 さて、前回の「大往生でしたね」も遺族のさまざまな事情を知らぬまま、末期の看取りだけを取り上げて放言してしまった私の苦い失敗談だった。
 しかし、どうだろう……。だれでも、つらい状況になった時
“がんばって”
“元気出して”
という励ましの一言に勇気づけられた経験があるだろう。応援してくれている人がいることがわかっただけで、千人の味方を得たような思いがするのも事実だ。発せられた言葉がどうでも、その人がこちらを気づかい、いたわる気持ちを持っていることに「ありがとう」と言える素直さは持っていたいと思う。

 さて、次回は都鳥さんからのリクエスト“スチャラカチャンの人生”でいきます。どんな人生だあ〜?