菅野秀浩のちょっといい話

第26話 豊かさのうらがわ

豊かさのうらがわ 挿絵

 このごろすこし変で、折角物が豊かにあって、生活水準が上がったと思うのに、自分だけ良いように考えて、他の人は無視するか、差別するばかりです。

 子供のころ、物が一つしか無いのはあたりまえで、ラジオも一つ、テレビも一台、ごはんのおかずだって、兄弟が沢山いるのに、一つのお皿や丼に一緒盛でした。

 そりゃァ、チャンネル争いや、兄や姉に御菜をとられるたびに喧嘩もしました。
でも、喧嘩をしながらも、自分だけが良い思いをするなんて、利己的な考えはありません。

 部屋だって、布団も一つだったんです。
だから、暑い時はなんとか涼しく、寒いときは体を付けあって、ワイワイと寝ました。

 お互いにいつも相手のことを考え、相手のいいように、自分だけ得をしようなんて思わなかったんです。

 今、学校へ通うと、いじめや暴力や差別が始まります。不思議でなりません。学校はみんな仲良くする所です。

 どうも、いまの世の中、なんでも豊富で、生まれたときから全部自分ひとりの物が多すぎて、相手が素敵な物を持っていたり、自分より劣っていたりすると、すぐに妬んだり、ばかにしたり、いじめたり、暴力を使って自分の思いどおりするのではないでしょうか。

 子供の時から一人部屋、豊富で、侵されない生活は、思いやりのない、協調性に欠けた自己中心的な人格を創りあげるようです。

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