菅野秀浩のちょっといい話

第62話 成仏への道Ⅳ

成仏への道Ⅳ 挿絵

 真言密教では、「身・口・意」の三業をいかに研ぎ澄ませて「三密」と成りえて、成仏に至るのか。いまだ菩薩として目覚めぬ者は、いかにして「速疾」に悟りに至るのか。

 その秘訣は、自分の心を知ることだと、明解する。

 即ち真言宗の根本の経典である大日経には、「如実知自心(あるがままの我が心を知るべし)」が説かれ、鏡のように我が心を自在に映しだしたときこそ、自ずから「三密」に到達し、「速疾」に成仏すると解き明かす。

 では、我がこころを知る手段は何か?

 それは、三毒を焼き盡くすことだと説く。三毒とは「貪・瞋・痴(とん・じん・ち)」この三つの心の動きをいい『自分の物は舌を出すのも嫌という吝ん坊で、自分だけに利益が集まり貪り欲っする自己中心的なこと。ささいな事でイライラして、赤くなったり青筋を立てて怒り瞋ること。正しい事の見極めもできず、つまらぬことにくよくよして、思い悩む愚かなこと。』この三つを指す。

 何方からの受け売りの譬えで恐縮だが、それはナベの中の澄んだ水に顔を映すのと似て、もし水がドロドロに濁っていたり、グラグラ煮えたっていたり、塵芥や腐った葉で覆われていたら、顔を映すことができない。

 心も貪ったり、瞋ったり、愚かに悩んだりして毒で汚れていると、真実の我が心を知ることは不可能で、そこで「三毒」を、悉く焼き盡くす事が先決だと明言するのである。

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