菅野秀浩のちょっといい話

第79話 密教の仏8 観音菩薩Ⅰ

密教の仏8 観音菩薩Ⅰ 挿絵

 仏像も、広く成仏を希う仏、慕われる仏、誰でも知っている仏、頼られる仏等様々だが、観音様ほど篤く信仰をあつめる仏はない。

 名前はサンスクリット原典により、「観自在菩薩(世界を自在に観察する)」といい、入竺沙門の訳者の鳩摩羅什(くまらじゅう)は、『妙法蓮華経』の翻訳に際し「観世音菩薩(世界の全ての音・願いを、観=聞き入れる)」とし、一般には「かんのんさま」と親しまれ、信仰をあつめている。

 真言宗では代表的な姿から、聖観音(天平の観音に対し、密教独自の平安以降の観音)、千手千眼観音(千の慈眼で衆生を見つめ、千の慈手で救済する)、馬頭観音(馬頭を頭上に戴き、猛威と忿怒で、魔障を降伏する)、十一面観音(十一の仏顔を頭上に戴き、諸魔を除き利益を潤す)、如意輪観音(意のままに宝・財産・智慧・富・勢力を授ける)、准胝観音(三世諸仏の母=世母と称し、心性の清らかを備える)の六体を、六観音と称す。又、他に不空羂索観音(計り知れない功徳と霊験を持つ)を加える場合もある。

 更に、先述の『妙法蓮華経』の観世音菩薩普門品二十五(功徳を説く経)には、観音の救いを求める衆生の姿に合わせて、様々な変身(応現身)が説かれ、実に三十三に変化することから、三十三観音(西国霊場)が発生し、西国・坂東・秩父の三霊場を百観音霊場と称して、霊場ブームを巻き起こし、現代も篤い信仰の善男善女の巡拝が絶えない。

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