長谷川正徳のちょっといい話

第45話 めでたい長寿国日本であるために

めでたい長寿国日本であるために 挿絵

 不老長寿は長い間の夢であった。
日本もいつの間にか世界の長寿国になり、あれよあれよというまに、世界一の長寿国になった。
平成4年の統計によれば,女性の平均寿命は82.22歳、男性のそれは76.09歳で、国際比較では女性が連続8年、男性が連続7年世界一の座を維持しており、長寿大国日本の地位は当分ゆるぎそうもない。
厚生省は「今後も平均寿命はわずかながら延び続ける」と見ている。

 ところが、その長寿の中味はどうなのか。
はっきり言ってあまりかんばしいものではない。
病床に寝たっきりの高齢者は50万人もあり、ジジババ抜きの風潮につれて、若い世代から疎外され、精神的「姥捨山(うばすてやま)」に捨てられて、いたずらなる高齢を嘆く老人が少なくない。
医学の進歩によって、寿命だけは伸びたものの、人生を楽しめない、生きながらえていることが苦痛になるような長寿ではまことにつまらないといわねばならぬ。

 このように、社会的にも医学的にも、手ばなしでは喜べない現代の長寿を「めでたい長寿」にするカギは、若さを保つためのいろいろな方法や教訓を、ひとりひとりが実行するか否かにかかっているといえよう。
年をとるということは、単なる生物学的な現象ではなく、ひとりの人間がどのような人生を生きてきたかという、全人格的な体験の結晶なのである。
こういうことを、少なくとも40代になったら、よくよく考えなければならない。

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