長谷川正徳のちょっといい話

第96話 老年期は人間形成が頂点である

老年期は人間形成が頂点である 挿絵

 敬老の日を前に、9月12日厚生省は平成元年の全国高齢者名簿(長寿者番付)を発表した。それによると9月30日までに百歳以上になる長寿者は、前年名簿より400人増えて、3078人(海外在留邦人を除く)となり、初めて3000人を突破した。

 男女別で見ると、男・630人、女・2448人で女性が約80%を占めている。この長寿者名簿が発表されるようになって昭和38年の男女合わせて153人あったのと比べ、約20倍もの伸びであり、最近の三年間は、毎年400人前後の大幅な増え方で、わが国の長寿社会が大変な勢いで進んでいることを示している。

 この高齢社会を迎えて、いよいよ私どもは、老人の生き甲斐とか、いのちと幸福といったことがらについて真剣に考えるものとならねばならない。ところが、この頃発表されたある、年齢と幸福感に関するアンケートを見るとちょっと淋しい気がする。二十代では「カッコいい」ことが何より大切、四十代ではマイホームや仕事に重点が移り、五十を過ぎ、定年退職になると、もはや「生の欲望」のうすれからきた諦めに支配されているようである。

 この調査でわかることは、人生50年が人生80年に伸びても、日本人の生きる姿勢は昔とあまり変わりばえがしていないということである。老年期を人生の黄昏、余りものとしてではなく、むしろ人間形成の頂点、人生価値の極地に達するための第二の人生として、生かしきるための、個人的、社会的な心の用意がまだまだなおざりにされていると言わねばならない。若いときから宗教心はしっかり養っておかねばならぬ。

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