名取芳彦のちょっといい話
法話図書館TOPに戻る
名取芳彦のちょっといい話TOPに戻る
名取芳彦先生のプロフィール
法話のお題募集!
名取芳彦先生のバックナンバー
名取先生にメールを出そう
第54話  本当のお坊さん


挿し絵    先月の15、16日に、東京ビッグサイトで行われた「デザインフェスタ」に参加した。
密蔵院にはそれなりに、大勢の方が来てくれるのだが、それがなかなか広がっていかない。
それならば、こちらから出てみようという単純な発想だ。坊さんのデリバリーサービスだ。
世に「仏教はむずかしい」「お坊さんと話すのは苦手」と思っている人が、いや、それ以前に、お坊さんと話したことがない人が、いかに多いことか……
誘った若い仲間にも、作務衣で行こうと声をかけておいた。うち2人は白い鼻緒の下駄を履いてきてくれた。
こちらとしては、どう見たってお坊さんの一群に見える筈だった。

   ところが、多くの来場者は私たちの作品の前を"ふむふむ"なんて顔をして通りすぎるばかり。
どうも私たちはお坊さんだとは思われていないようだ。
仲間が持ってきた木彫りの観音さまを見て、かろうじて
「えっ?お坊さんなんですか?」
と声をかけてくる人がいる程度だ。
たしかに、作務衣すがたで短髪の人は、居酒屋へ行けばたくさん働いている。

   そこで、持っていた紙に筆ペンで書いた。
"妙な言い方ですが、本当のお坊さんたちです"
それも4枚も書いて、ブースのあちこちに貼った。
すると、人の流れが止まった。多くの人が
「へえ、お坊さんですか」
と立ち止まってくれるようになったのだ。
"へえ"という感嘆詞の前には、明らかに"こんなところに"という語が省略されている。
「こんなところに参加しているお坊さんなら、面白そうだ」
というのだ。

   私はそういうところから、仏教の考え方とつながりを持ってもらえればいいと思っている。
"そういえば、阿弥陀さまって本当にいるの?"とか"お坊さんは丸儲けなの?"とか。
それにしても、 "本当のお坊さん"という張り紙は、どこか変な気がする……。

   次回は、私たちのブースの向いで参加していた、イラストレーター(漫画家?)のはやしゆうさんについて。
作品紹介の許可をもらったので、その傑作作品を紹介します。

前のお話
次のお話


Copyright © 2003 Japan Temple VAN Inc. All rights reserved.