ちょっといい話

第104話 鳩の頸

挿し絵  前回読んでいない方は、まず前回をお読みください。でないと、何だか分かりません。

 ヒョイと首をのぞかせた鳩を見て、脚立を支えていた家内の「あなた、顔を出したわ。ああ、やっぱり鳩よ」などと呑気な会話に付き合ってはいられぬ。
坊主頭というのは、髪がないぶん保水能力は極端に低く、吹き出した汗はそのまま目に流れこむ。目が痛いのだ。おまけに石膏ボードのかけらや粉はもちろん、天井裏の積年の埃も一緒に落ちてくるのだ。

 頻繁に下をのぞきこむ鳩の顔(というより頸)を、タイミング良くヒョイとつかんだ。細くて、たよりない。しかし、まだ穴は鳩の胴体を引きずり出せる大きさにはなっていない。
とりあえず、頸だけをひっつかんではいるものの、相手が小鳩だから逃げないように力をいれれば、頸だけが取れてしまうかもしれない。そんなことになったら、エライことである。想像するだけでもおぞましい光景だ。

 細心の注意をはらいながら、穴の縁を叩いて大きくする。直径約20cmの穴が開いた。充分胴体も出る大きさだと思ったので、鳩をひっぱりおろした。用意してあった段ボールに入れようと家内に渡そうとすると、気持ちが悪いなどと、自分の旦那がまるで泥とおしろいで化粧して、目にタバスコを差したような状況がわかっていない発言……。
鳩を箱に収め、床に落ちた天井の残骸を片づけるまでに、開始からすでに90分が経過していた。
ホッとしたのも束の間。黒々と開いた天井の穴を見て、この穴をどうやってふさごうか思案にくれた。板を貼るにも、石膏ボードは下からの釘ではすぐ抜けて効果がない。両面テープも切らしていたのだ。

嗚呼、2回で終わる筈の話がごめんなさい。
次回完結編!