ちょっといい話

第143話 堂々人生

挿し絵  今週は七五三です。すでに文化の日あたりから街のあちこちで晴れ着の子供たちを目にしていますが、11月15日が正式な日。
 朝から綺麗におめかしして、写真撮影、お参り、親類縁者へご挨拶…“おかげさまでこんなに立派になりました”と親が言い、子供がペコリとあたまを下げる。皆からの御祝儀やおひねりは、もちろん親の懐に入ります。子供は「私がもらったのに」と怪訝な目つきをしますが、世の中そんな簡単じゃない。どこでお祝いをもらうかわからないから、内祝いのお赤飯や千歳飴は多めに用意しなくてはなりません。親は喜びもひとしおの一方で、心遣いも大変です。

 さて、先週、檀家さんの子供が七五三で、夕方になってお墓参りにやってきました。お墓にはいっているおじいちゃんに挨拶していないことに気がついて、あわててお母さんとおばあちゃんと一緒にやってきたそうです。さすがに一日着物で過ごした女の子は、疲れ気味のようでした(足袋でツルツルした草履を長時間履くのはホント疲れるんです)。髪の毛がいくらかほつれていたものの、しっかりと着付けされたためでしょう、襟元はきれいにそろっていました。
 私は玄関でお線香をおけして、お墓に向かう三世代揃い踏みの親子の後ろ姿を見送ってハッとしました。おばあちゃんはつい5年程前までは“孫におばあちゃんなんて呼ばせない派”。そしてお母さんになった彼女はつい5年前までは、ういういしいお嫁さんだった。それが今や堂々たるおばあちゃん姿、頼もしいお母さんの言動になっているのです。

 子供の成長を祝う七五三ですが、この儀式はその子の周囲の大人たちが、その子を中心にした役割をしっかり務めることができるようになったお祝いでもあるかも……。
 結果論ですが、私は考えました。私は今、3人の子供の親らしくなっているのだろうか。結婚22年たった夫らしい雰囲気をもっているのだろうか。お坊さん歴(仏さまみたいになりたいなと思ってから)25年の僧侶っぽくなっているのだろうか。そして、10年後の自分はどうなっているんだろうか。いやいや、10年後などはどうでもいい。毎日を楽しく、しっかりと生きていくぞ!その積み重ねしかないのだ!ふり返れば結果論、今やることをやっていく、それが堂々人生だ。スミマセン、今回はイキオイで書きました。

 さて次回は、楽しく生きようと思っているのに、そうさせてくれない人がいるという、横浜のチョコママさんからのリクエストに応えて“ザケンナ!”でまいります。誰かに怒りを持って人への処方箋になるか、ならぬか……。