佐藤俊明のちょっといい話

第89話 子供は見ている

子供は見ている 挿絵

『鳩翁道話』にこんな話があります。

 昔、ある家に目の見えない姑さんがおりました。嫁さんはひどく邪険に扱って、姑がごはんをこぼすからといってうす汚い木の空箱になんでも放り込んで食べさせておりました。
ところが或る日、子供たちが木屑を集めて針を打っておりましたので、嫁さんが、

「坊やたち、何してるの?」

と聞きました。
すると長男が得意気に、

「おかあさんがおばあちゃんになってから食べさせる箱を作ってるの」

と答えたそうです。

 それを聞いて嫁さんびっくりし、それからというものはすっかり心を改めて姑さんを大事にしたということです。

 子供の頃は、眼が覚えている限り一瞬の休みもなくいろんな情報を集め、見るもの聞くもの感ずるものすべてを吸収して成長してゆきます。
 だから家庭の中に宗教的雰囲気がただよっていれば、子供は知らず識らずのうちに心豊かに成長してゆくのです。
「宗教なき教育は賢い鬼をつくる」という諺があります。賢い鬼は家庭や社会を破壊することはできても建設することはできません。
 賢い鬼をつくらないよう宗教情操の豊かな家庭を築くことが大切であります。

 このごろ寺を訪ねてくる人の中に、子供が建ててくれるとは思えないからお墓を造っておきたいという人がありますが、老後になってそうした心配をしなくてよいよう、若い頃から真に安らぎのある家庭づくりに心がけるべきであります。

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