菅野秀浩のちょっといい話

第3話 二者択一

二者択一 挿絵

 1997年(平成9年)7月に公布され、その年の10月16日に施行された「臓器の移植に関する法律」は、人間の死を法律で定めたことで多くの議論を呼び、現在も脳死の判定基準や、臓器の提供者本人の意思確認ということに、納得できない倫理の不徹底さへの疑問を、投げかける者も多い。私もその一人ではあるが、違った見解ももっている。

 このごろの日本は変である。

 それは「二者択一」という、マークシート方式のままの、「良いか悪いか」「認めるか認めないか」「するかしないか」のような、予め設定された答えから選んで判断する、客観的な考え方が主流であるということである。

 入学試験や統計調査で、その集計の至便を図るために取り入れられたものが、今日では身近な事にも及んでいる。しかし、試験や統計のように、学力を試したり、大勢の平均を知る場合はよいが、「いのち」に拘わる大事は、さまざまな選択肢から、自分だけの判断があるべきではないだろうか。

 人は十人いれば十の、百人には百の、千人には千のさまざまな個々の「いのち」があり、「死」もある。だから、癌の告知や脳死や臓器移植の認知を、二者択一で判断してはならないし、法律で決めることもない。

 自分の「いのち」は、自分自身のもの。

 他によって左右されることもない。

 生涯を決定する大事に、自分を知り、自身で判断する覚悟を持ちたいものである。

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