菅野秀浩のちょっといい話

第90話 密教の仏13 虚空蔵菩薩Ⅰ

密教の仏13 虚空蔵菩薩Ⅰ 挿絵

 愈々十三の「密教の仏」も、最後の虚空蔵菩薩を説くに至った。深遠な世界を、巧く伝達できたかが心配であるが、祖先から自分への尊い命の受け継ぎを感謝し、先亡諸精霊への追善供養に実践して戴ければ幸いである。

 扠て虚空蔵菩薩は、八十億の菩薩の中で最も上主をなすと言われ、「宇宙の総てのものを含蔵し、無量の福徳・智慧を具え、常に衆生に与えて諸願を成就させる菩薩」で、「大日如来の福智二徳を本誓とする故に、同体」であるとも説かれ、身の丈は二十五由旬(一由旬は約7km=仏教辞典)で、真実の大身を現ずるときは、虚空(一切のものを包み込んだ空間=宇宙)と同じであるという。

 そこで「虚空蔵」と号され、如意満願・悉地成就の優れた徳目で衆生を救済する。

 虚空蔵菩薩は、奈良時代に既に盛んに修された「求聞持法(ぐもんじほう)」の本尊で、明けの明星が輝くとき、この菩薩の真言「ノウボ アキャシャ キャラバヤ ヲン アリ キャマリ ボリ ソワカ」を壱百万遍繰り返し、法の如く誦すれば、「一切の教法を暗誦し得る」とされ、弘法大師様も四国室戸岬で修行し、その成就の暁には、輝く明星が眼前に飛来し、口に入ったという驚くべき体験談が、自著に記されている。

 密教の代表的な本尊で、「肉身に白衣、天冠に五仏(三十五仏)あり、右手に火炎のついた剣を持ち、左手は腰に当て宝珠を乗せた蓮華をもち、蓮華座に坐す。

前の法話
菅野秀浩のちょっといい話 法話一覧に戻る
法話図書館トップに戻る